霧と花のあいだを歩く
霧が草原をそっと包み
足もとだけが かすかに見える
静けさの底で
世界はまだ 息をひそめている
やがて霧がほどけ
濡れた花びらが ひとつまたひとつ
草の間から顔を出す
黄色 紫 白
色の息づかいが
静かな朝にそっと灯る
森へ入ると
風がひとすじ通り抜け
木の葉の雨滴が
ぱらぱらと落ちては消え
すぐに静寂が戻ってくる
その静けさの中で
枝先の小さな花芽が
「ここにいるよ」と
控えめに わたしを迎えてくれる
そして山頂へ
霧がひらけ 空が広がる
花も森も すべてが背中にあるのに
その気配だけが
まだ足もとに寄り添っている
今日という道を
静かに歩き終える
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山気在吾心(さんき わがこころにあり)
濡花迎行客
幽枝点緑陰
滴落還成寂
山気在吾心
読み下し文:
濡れたる花 行く客を迎え
かすかな枝 りょくいんをともす
したたり落ちて またしずけさとなり
山気 吾が心に在り
意:
濡れた花が歩く者を迎え
灌木の枝先が緑陰を点じ
雨滴が落ちては静寂に戻り
山の気配が わたしの心に宿る
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